
ボキタロー君の会社の財務諸表を拝見したのですが、例年に比べて「通信費」が異様に多いのはなぜですか?

郵便切手をまとめ買いしたの。切手って「通信費」で処理するんだよね?

それはそうですが、その切手はすべて使い切ったのですか?

ううん、ほとんど使ってないね。だから残りは金券ショップに売っちゃった。帳簿には記載してないけど。

そのような処理をすると、恣意的に費用を大きく(利益を小さく)することが可能となってしまいます。利益が小さくなると税金の金額も少なくなるので税務上も問題です。

そんなつもりなかったけど。じゃあ、どうやって処理すればいいの?

それでは今回は貯蔵品の処理について勉強しましょう。貯蔵品の仕訳自体は簡単ですが、再振替仕訳という簿記特有の考え方が少しやっかいなので、しっかりと理解してください。
貯蔵品に関する一連の処理
コピー用紙や文房具、プリンタ用のインクなどのように毎期経常的に購入して消費するような消耗品は、購入時にすべて費用処理するのが一般的です。
しかし、郵便切手や収入印紙など換金性が高い資産は、財産管理や税務申告を目的として厳密な資産計上を行う必要があります。
そこで、このようなものに関しては購入時には適切な費用勘定で処理し、決算において未使用額を資産(貯蔵品勘定)に振り替える処理を行います。
消耗品費は貯蔵品へ振り替えることはしないのが一般的です。未使用の消しゴムやボールペンがどれくらい残っているのかなど調べてもあまり意味がありません。簿記では、金額的にも科目的にも重要性の乏しいものは簡便な処理をすることが認められています。これを重要性の原則といいます。
購入時の仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
8,200 | 8,200 |
決算整理仕訳
先ほど説明したように、郵便切手や収入印紙などは使った分だけが当期の費用となり、使っていない分は資産(貯蔵品)として次期へ繰り越します。なお、この処理は決算整理仕訳として行います。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
820 | 820 |
未使用額を貯蔵品勘定へ振り替えることによって、通信費勘定には当期の使用額が残ります。つまり使った分だけが当期の費用となるわけです。

この決算整理仕訳の結果、決算整理後における通信費勘定の金額は当期使用額の¥7,380、貯蔵品勘定の金額は未使用額の¥820となります。
翌期首の仕訳(再振替仕訳)
翌期首には再振替仕訳(さいふりかえしわけ)を行います。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
820 | 820 |
それではなぜ、このような再振替仕訳が必要なのでしょうか?これから詳しく説明していきます。
再振替仕訳が必要となる理由
再振替仕訳を説明するために、翌期の期首から決算までの一連の処理を見ていきます。



まとめ

これで適正な期間損益を計算するために再振替仕訳が必要であることがお分かりになったと思います。

う~ん。わかったような、わからないような。

決算整理仕訳において当期の費用にならないものをマイナスします。そして、それを次期の費用とするために翌期首の再振替仕訳によって再び費用に戻してやるというイメージです。

・・・難しいね。

初めて簿記を勉強する方にとっては難しいかもしれませんが、通信費勘定が期首→期中→期末という一連の流れでどのようになるのかを把握すれば理解しやすいと思います。
- 郵便切手や収入印紙などは、購入時には適切な費用勘定で処理し、決算において未使用額を資産(貯蔵品勘定)に振り替える。
- 適正な期間損益計算のため、期首において前期末の決算整理仕訳の逆仕訳を行うことがある。これを再振替仕訳という。