固定資産の滅失と割賦購入

固定資産の滅失と割賦購入

今回は災害などによって固定資産を失ったときの処理と固定資産を分割払いで購入したときの処理です。分割払いで購入した場合、代金の中に利息が含まれていますが、これをどう処理するのかがポイントです。

固定資産の滅失

地震や火災などの災害によって、固定資産を失う(または価値が減少する)ことを滅失(めっしつ)といいます。

固定資産が滅失した時の仕訳

例題1
当期首に建物(取得原価¥100,000、減価償却累計額¥60,000、間接法で記帳)が火災により焼失したので、保険会社に保険金を請求した。なお、この建物には¥50,000の火災保険がかけられている。
固定資産の滅失のイメージ

保険会社に保険金を請求すると保険会社が調査を行い、その結果いくら支払うかを決定します。¥50,000の火災保険をかけているからといって、必ず¥50,000の保険金が支払われるわけではありません。

保険金が確定するまでの間、焼失による損益が算定できないので、簿価の減少部分を一時的に未決算勘定で処理しておきます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
建物減価償却累計額 60,000 建物 100,000
未決算 40,000    

保険金の金額が確定したときの仕訳

保険金の金額が確定したときの処理方法は、未決算勘定の金額と保険金額との大小関係によって異なります。

「未決算>保険金」の場合(借方に差額が出るケース)

例題2-1
保険会社から保険金¥35,000を支払うという通知を受けた。

すでに計上している未決算勘定を減額するとともに、保険金との差額を火災損失勘定(特別損失)で処理します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
未収入金 35,000 未決算 40,000
火災損失 5,000    

注意
この時点では支払いの通知を受けただけであり、まだ保険金を受け取っていないので、確定した保険金額は「未収入金」としておきます。

「未決算<保険金」の場合(貸方に差額が出るケース)

例題2-2
保険会社から保険金¥50,000を支払うという通知を受けた。

未決算勘定を減額するとともに、保険金との差額を保険差益勘定(特別利益)で処理します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
未収入金 50,000 未決算 40,000
    保険差益 10,000

滅失した固定資産に保険を掛けていない場合

例題1で仮に滅失した建物に保険がかけられていない場合は、建物の帳簿価額をすべて火災損失勘定で処理します

借方科目 金額 貸方科目 金額
建物減価償却累計額 60,000 建物 100,000
火災損失 40,000    

固定資産の割賦購入

固定資産の割賦(かっぷ)購入とは、分割払いの契約で固定資産を購入することをいいます。

割賦購入したときの仕訳

例題3
備品¥120,000を6回の分割払いで購入し、代金として毎月末を決済日とする¥21,000の約束手形6枚(総額¥126,000)を振り出した。なお、利息分については前払利息勘定で処理する。

割賦購入では代金の支払いが遅れることから、通常は代金の中に利息が含まれますが、この利息は原則として取得原価に含めません

固定資産の割賦購入のイメージ(割賦購入したとき)

備品の取得原価は購入代価(付随費用がある場合はそれを含めた金額)とし、利息分については問題文の指示により前払利息勘定で処理します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
備品 120,000 営業外支払手形 126,000
前払利息 6,000    

注意
この約束手形は商品以外の購入に際して振り出したものなので「営業外支払手形」を使います。

営業外受取(支払)手形と営業外電子記録債権(債務)

代金を支払ったときの仕訳

例題4
月末となり、以前備品を割賦購入した際に振り出した手形について現金で決済した。なお、利息の処理は支払日に定額法で費用計上する方法によっている。
SHIBUYA
SHIBUYA

2級では利息の処理について、利息相当額を支払期間で均等に配分する方法(定額法)が出題されます。

固定資産の割賦購入のイメージ(代金を支払ったとき)

例題の場合、利息総額¥6,000を支払回数6回で割った金額(¥1,000)を支払日ごとに前払利息勘定から支払利息勘定へ振り替えます

借方科目 金額 貸方科目 金額
営業外支払手形 21,000 現金 21,000
支払利息 1,000 前払利息 1,000

【参考】購入時に利息分を費用計上する方法

固定資産を割賦購入したときに、利息相当額を支払利息勘定で処理する方法もあります。出題可能性は低いかもしれませんが念のため簡単に説明しておきます。

①割賦購入したときの処理

利息分は取得原価の部分と分けて支払利息勘定で処理します。つまり、購入時に利息相当額のすべてを費用計上するというわけです。

借方科目 金額 貸方科目 金額
備品 120,000 営業外支払手形 126,000
支払利息 6,000    

②代金を支払ったときの処理

手形の代金を支払ったときには利息に関する処理は行いません。

借方科目 金額 貸方科目 金額
営業外支払手形 21,000 現金 21,000

③決算時の処理

決算において、利息の未経過分を支払利息勘定から前払利息勘定へ振り替えます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
前払利息 5,000 支払利息 5,000

固定資産の割賦購入(購入時に利息分を費用計上する方法)

決算整理後残高試算表の前払利息勘定と支払利息勘定は、利息分を購入時に資産計上した場合でも費用計上した場合でも同じになります。

MEMO

ただし月次決算を行っている会社では、月次の損益計算において購入時の支払利息¥6,000の全額が費用となってしまうため、購入時に前払利息とする方法が適切であると言えます。

復習問題

2級仕訳問題集part.2のQ2-12~Q2-16を解きましょう!