これまで学習してきた「受取手形」や「支払手形」という勘定科目は、実は”商品”を売買したときにしか使えません。ここでは商品以外のものを売買したときに手形を使用した場合、どのように処理するのかを見ていきましょう。
営業外手形を受け取ったときの処理
営業外手形とは?
冒頭でもふれたように「受取手形」や「支払手形」という勘定科目は、商品を売買したときにしか用いることはできません。
商品以外のものを売買したときに手形を使用した場合は、営業外受取手形勘定(資産)または営業外支払手形勘定(負債)を用いて処理します。
約束手形を受け取ったときの仕訳
商品以外のものを売却して約束手形を受け取ったときは営業外受取手形勘定(資産)で処理をします。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
営業外受取手形 | 100,000 | 土地 | 80,000 |
固定資産売却益 | 20,000 |
決済したときの仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100,000 | 営業外受取手形 | 100,000 |
営業外手形を振り出したときの処理
約束手形を振り出したときの仕訳
商品以外のものを購入して約束手形を振り出したときは営業外支払手形勘定(負債)で処理をします。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
備品 | 50,000 | 営業外支払手形 | 50,000 |
決済したときの仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
営業外支払手形 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
【参考】営業外電子債権・債務
電子記録債権は、手形債権(「受取手形」)に準じた会計処理を行うこととされています。
電子記録債権は、紙媒体ではなく電子記録により発生し譲渡され、分割が容易に行えるなど、手形債権と異なる側面があるものの、手形債権の代替として機能することが想定されており、会計処理上は、今後も並存する手形債権に準じて取り扱うことが適当であると考えられる。
実務対応報告第27号 電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い
したがって、固定資産や有価証券の売買など、通常の営業取引以外の取引にもとづいて電子記録債権を発生させた場合の会計処理は次のようになります。
債権者側の処理
①固定資産や有価証券等を売却したとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
未収入金 | ×× | 固定資産等 | ×× |
②発生記録により、未収入金を電子記録債権としたとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
営業外電子記録債権 | ×× | 未収入金 | ×× |
商品以外のものを販売したことによって生じた受取手形は「営業外受取手形」で処理をします。これに準じて、商品以外のものを販売したことによって生じた債権(「未収入金」など)を電子記録債権とした場合は、「営業外電子記録債権」という勘定科目で処理をします。
③決済されたとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金など | ×× | 営業外電子記録債権 | ×× |
債務者側の処理
①固定資産や有価証券等を購入したとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
固定資産等 | ×× | 未払金 | ×× |
②発生記録により、未払金を電子記録債務としたとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
未払金 | ×× | 営業外電子記録債務 | ×× |
商品以外のものを購入したことによって生じた支払手形は「営業外支払手形」で処理をします。これに準じて、商品以外のものを購入したことによって生じた債務(「未払金」など)を電子記録債務とした場合は、「営業外電子記録債務」という勘定科目で処理をします。
③決済されたとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
営業外電子記録債務 | ×× | 現金など | ×× |
【参考】貸付金に関連して電子記録債権を発生させた場合
試験に出題される可能性は低いと思われますが、参考として、貸付金に関連して電子記録債権を発生させた場合の処理を説明しておきます。
債権者側の処理
①お金を貸したとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸付金 | ×× | 現金 | ×× |
②発生記録により、貸付金を電子記録債権としたとき
仕訳なし
手形を担保として金銭を貸し付けた場合、「手形貸付金」という科目で処理しますが、貸借対照表上は「貸付金」と「手形貸付金」は区別せずに両者とも「貸付金」として表示します。
この扱いに準じると、貸付金が元となる電子記録債権についても区別して表示する必要はないということになるので、別の科目に振り替えるような処理はしません。
債務者側の処理
①お金を借りたとき
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | ×× | 借入金 | ×× |
②発生記録により、借入金を電子記録債務としたとき
仕訳なし
手形を担保として金銭を借り入れた場合、「手形借入金」という科目で処理しますが、貸借対照表上は「借入金」と「手形借入金」は区別せずに両者とも「借入金」として表示します。
この扱いに準じると、借入金が元となる電子記録債務についても区別して表示する必要はないということになるので、別の科目に振り替えるような処理はしません。
2級仕訳問題集part.2のQ.2-11~Q.2-12を解きましょう!