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当期の連結修正仕訳6~未実現利益の消去(アップストリーム)~

当期の連結修正仕訳6~未実現利益の消去(アップストリーム)~

アップストリームにおける未実現利益の消去に関する処理は前回学習したダウンストリームの考え方が基本となります。前回の内容をしっかりと理解したうえで読んでください。

アップストリームにおける未実現利益の消去方法

子会社が親会社へ商品などを販売するケース(アップストリーム)は子会社側が利益を付す取引なので、未実現利益を消去した場合は子会社の計上した利益が変動することになります

すでに学習したように子会社が計上した利益は、その全額を連結上の利益とはせずに親会社(連結上の利益)と非支配株主持分に按分します。

「ちょっと何言ってるかわかりません」という人はこちら。

当期の連結修正仕訳1~のれんの償却・当期純損益の振り替え・配当金の修正~当期の連結修正仕訳1~のれんの償却・当期純損益の振り替え・配当金の修正~
アップストリームにおける未実現利益の消去方法

未実現利益の消去によって子会社の利益が変動した場合においても、その変動額に対しては持分比率に応じて親会社と非支配株主持分に按分する必要があります。

この方法を全額消去・持分比率負担方式といいます。

期末商品に含まれる未実現利益の消去

例題1
P社(親会社)はS社(子会社)の発行済株式の60%所有し、支配している。S社はP社に対し、仕入原価に10%の利益を付加して商品を販売しており、P社の期末商品のうち¥1,100はS社から仕入れたものである。当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。

(1)未実現利益の全額を消去

まず、非支配株主持分のことは考えずに未実現利益の全額を消去します。これはダウンストリームの仕訳と同じです。

借方科目 金額 貸方科目 金額
売上原価 100 商品 100

・¥1,100×0.1/1.1=¥100

(2)非支配株主持分への按分

(1)で未実現利益の全額を消去したわけですが、このままだと(連結財務諸表は親会社の立場から作成するので)利益の減少額をすべて親会社が負担することになってしまいます。

しかし先ほど説明したように、アップストリームでは持分比率に応じて親会社と非支配株主にこれを負担させるべきです。そこで、非支配株主が負担すべき金額を元に戻してやります

ボキタロー

減らし過ぎた金額(親会社の負担として減少すべきでなかった金額)を元に戻してやるといった感じですね。

ただし、「元に戻す」と言っても単純に逆仕訳をすればいいわけではありません。なぜなら、勘定科目が「売上原価」のままだと、これが非支配株主への按分額であることを示すことができないからです。

非支配株主に帰属する当期純利益

そこで、「売上原価」ではなく「非支配株主に帰属する当期純利益」という科目を使って処理します。

非支配株主に帰属する当期純利益の意味

「非支配株主に帰属する当期純利益」は連結上の利益のマイナス項目(借方項目)なので、これが貸方にあるということは利益のマイナス項目をマイナスする、つまり連結上の利益(「親会社株主に帰属する当期純利益」)が増加するということになります。

非支配株主持分への按分

また、利益の減少額を非支配株主に負担させることにより非支配株主持分が減少したということを示すため、借方は「非支配株主持分当期変動額」とします。

MEMO
「非支配株主持分」は純資産(貸方)の項目なので、「非支配株主持分当期変動額」が借方にあるということは「非支配株主持分」が減少したということを意味します。

連結修正仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
非支配株主持分当期変動額 40 非支配株主に帰属する当期純利益 40

・未実現利益¥100×非支配株主持分40%=¥40

非支配株主持分への按分

子会社が当期純利益を計上したときはその一部を持分比率に応じて非支配株主へ振り替えました。逆に利益が減少したときは、仕訳上も当期純利益を計上したときの逆になると考えればわかりやすいかもしれません。

(3)連結修正仕訳

以上の(1)と(2)の仕訳を合算したものが例題1の連結修正仕訳となります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
売上原価 100 商品 100
非支配株主持分当期変動額 40 非支配株主に帰属する当期純利益 40

期首商品に含まれる未実現利益の消去

例題2
P社(親会社)はS社(子会社)の発行済株式の60%所有し、支配している。S社はP社に対し、仕入原価に10%の利益を付加して商品を販売しており、P社の期首商品のうち¥1,100はS社から仕入れたものである。当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。

(1)前期の連結修正仕訳の引継ぎ(開始仕訳)

連結財務諸表は親会社と子会社の個別財務諸表を合算して作成します。ところが、前期末の連結修正仕訳は個別会計上には反映されていないので、当期の連結財務諸表の作成にあたって、前期末までに行った連結修正仕訳を再度行う必要があります(開始仕訳)。

利益に影響を及ぼす項目(「売上原価」と「非支配株主に帰属する当期純利益」)は「利益剰余金当期首残高」となります。また、「非支配株主持分当期変動額」は「非支配株主持分当期首残高」となる点に注意してください。

借方科目 金額 貸方科目 金額
利益剰余金当期首残高 100 商品 100
非支配株主持分当期首残高 40 利益剰余金当期首残高 40

(2)期首商品に含まれる未実現利益の実現

期首商品は当期において、すべて外部に販売された(利益が実現した)と考えて売上原価を修正します。これは前期末の連結修正仕訳の逆仕訳となります。

詳しい説明はこちらをご覧ください。

当期の連結修正仕訳5~未実現利益の消去(ダウンストリーム)~当期の連結修正仕訳5~未実現利益の消去(ダウンストリーム)~
借方科目 金額 貸方科目 金額
商品 100 売上原価 100
非支配株主に帰属する当期純利益 40 非支配株主持分当期変動額 40

(3)連結修正仕訳

以上の(1)と(2)の仕訳を合算したものが例題2の連結修正仕訳となります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
利益剰余金当期首残高 100 商品 100
非支配株主持分当期首残高 40 利益剰余金当期首残高 40
商品 100 売上原価 100
非支配株主に帰属する当期純利益 40 非支配株主持分当期変動額 40

土地の売却にかかる未実現利益の消去

例題3
P社(親会社)はS社(子会社)の発行済株式の60%所有し、支配している。S社はP社に対し、土地(帳簿価額¥10,000)を¥11,000で売却した。なお、P社は期末現在、この土地を保有している。当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。

基本的には商品の場合と同じように考えていけば大丈夫です。

(1)未実現利益の全額を消去

まず、非支配株主持分を考えずに未実現利益の全額を消去します。これはダウンストリームの仕訳と同じです。

借方科目 金額 貸方科目 金額
固定資産売却益 1,000 土地 1,000

(2)非支配株主持分への按分

未実現利益の消去に伴って減少した子会社の利益について、持分比率に応じて非支配株主にも負担させます。

土地の売却にかかる未実現利益の消去

非支配株主が負担すべき金額(親会社の負担として減少すべきでなかった金額)を元に戻してやります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
非支配株主持分当期変動額 400 非支配株主に帰属する当期純利益 400

・未実現利益¥1,000×非支配株主持分40%=¥400

(3)連結修正仕訳

以上の(1)と(2)の仕訳を合算したものが例題3の連結修正仕訳となります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
固定資産売却益 1,000 土地 1,000
非支配株主持分当期変動額 400 非支配株主に帰属する当期純利益 400

貸倒引当金の修正

例題4
P社(親会社)はS社(子会社)の発行済株式の60%所有し、支配している。当期末においてS社のP社に対する売掛金が¥1,000あった。当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。なお、S社はこの売掛金に対して5%の貸倒引当金を設定している(差額補充法)。

(1)債権債務の相殺消去と貸倒引当金の修正

まず、債権債務の相殺消去と貸倒引当金の修正を行います。この仕訳はダウンストリームと同じなので詳しい説明は省略します。

忘れた人はこちらで復習を。

当期の連結修正仕訳4~貸倒引当金の修正~当期の連結修正仕訳4~貸倒引当金の修正~
借方科目 金額 貸方科目 金額
買掛金 1,000 売掛金 1,000
貸倒引当金 50 貸倒引当金繰入 50

(2)非支配株主持分への按分

子会社において親会社に対する売掛金がある場合は、未実現利益の消去とは逆に、子会社の費用(貸倒引当金繰入)が減少することによって利益が増加することになります。

この子会社の利益の増加について、持分比率に応じ非支配株主持分も増加させます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
非支配株主に帰属する当期純利益 20 非支配株主持分当期変動額 20

ボキタロー

この仕訳を未実現利益の消去とは逆に考えていきましょう。

子会社の費用(貸倒引当金繰入)を減少するということは「連結上の利益を増加させる」ということを意味します。(1)で貸倒引当金繰入を消去したわけですが、このままだと(連結財務諸表は親会社の立場から作成するので)利益の増加額がすべて親会社の持分となってしまいます。

しかし、アップストリームでは持分比率に応じて親会社と非支配株主にこれを負担させるべきなので、非支配株主が負担すべき金額を元に戻してやります

貸倒引当金の修正(アップストリーム)

増やし過ぎた金額(親会社の持分として増加すべきでなかった金額)を元に戻してやるといった感じです。

ボキタロー

未実現利益の消去とは逆ですね。

(3)連結修正仕訳

以上の(1)と(2)の仕訳を合算したものが例題4の連結修正仕訳となります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
買掛金 1,000 売掛金 1,000
貸倒引当金 50 貸倒引当金繰入 50
非支配株主に帰属する当期純利益 20 非支配株主持分当期変動額 20