無形固定資産と長期前払費用

無形固定資産と長期前払費用

無形固定資産とはその名の通り形の無い(目に見えない)資産のことです。形が無いのに固定資産というのは少々変な感じですが、これをどのように処理するのか見ていきましょう。

無形固定資産

無形固定資産とは?

無形固定資産とは
「法律上の権利として認められたもの」や「経済的な価値を有すると認められるもの」など、長期間に渡って収益の獲得に貢献する効果があるものを無形固定資産といいます。

MEMO
無形固定資産は建物や備品などのような有形固定資産と違って、形がなく目に見えないという点に特徴があります。

無形固定資産には以下のようなものがありますが、2級では取得と償却の仕訳ができれば大丈夫です。

  1. 法律上の権利として認められたもの:(例)特許権、商標権、借地権など
  2. 経済的な価値を有すると認められるもの:(例)ソフトウェア、のれん

注意
土地は時の経過によって価値が下がるものではないので「借地権」は償却しません。

無形固定資産を取得したときの仕訳

例題1
当期首(×1年4月1日)に独自の技術を開発し特許権を取得した。この取得に要した費用は¥340,000であり、登録料¥60,000とともに現金で支払った。

無形固定資産を取得したときは取得に要した支出額をもって取得原価とします。また、登録料などの付随費用は取得原価に含めます

借方科目金額貸方科目金額
特許権400,000現金400,000

決算時の仕訳

例題2
×2年3月31日に決算をむかえたので、特許権の償却(償却期間:8年、月割計算)を行う。

無形固定資産も有形固定資産と同じく、時の経過によってその価値が減少すると考えられるので、決算において償却(費用化)を行います。

無形固定資産の償却は定額法で残存価額はありません。また、無形固定資産の記帳方法は直接法のみなので、減価償却累計額に相当するものはありません。

直接法ってなに?と思った方はこちら。

減価償却の記帳方法(間接法と直接法)および建設仮勘定 減価償却の記帳方法(間接法と直接法)および建設仮勘定

無形固定資産の償却方法

残存価額ゼロ
償却方法定額法
償却期間法定有効期間(問題文で与えられるので覚える必要はありません)
記帳方法直接法

無形固定資産の償却額は、無形固定資産の名称の後に「○○償却」と付ければいいだけです。

SHIBUYA
SHIBUYA

例えば償却する無形固定資産が「商標権」であれば、借方は「商標権償却」となります。

したがって、例題2の答えは次のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
特許権償却50,000特許権50,000

特許権償却の金額は次のように計算します。

¥400,000×12か月/96か月(8年)=¥50,000

長期前払費用

固定資産のうち、有形固定資産でも無形固定資産でもないものは貸借対照表上、投資その他の資産の区分に表示します。

MEMO
投資その他の資産には「投資有価証券」、「長期貸付金」、「長期前払費用」などがありますが、ここでは長期前払費用について学習していきたいと思います。

短期と長期の意味

会計上、短期とは1年以内に現金化されたり費用化されたりする資産・負債のことを意味し、流動項目(流動資産、流動負債)として表示します。一方、長期とは1年を超えて現金化されたり費用化されたりする資産・負債のことを意味し、固定項目(固定資産、固定負債)として表示します。

なお、この1年以内か1年超かということは決算日の翌日から起算します。

貸付金を例にとって説明すると、決算日の翌日から起算して返済期日が1年を超えるものは「長期貸付金」として固定資産の区分に表示し、返済期日が1年以内に到来するものは「短期貸付金」として流動資産の区分に表示します。

また、この短期か長期かという判断は決算日ごとに行うということに注意が必要です。

例えば「長期貸付金」として表示しているものでも、決算日の翌日から1年以内に返済期日が到来するようになったものについては、「長期貸付金」から「短期貸付金」へ振り替える処理を行います。

短期と長期

長期前払費用の処理方法

保険料などを支払ったときの仕訳

例題3
当期首(×1年4月1日)に、向こう5年分の保険料¥50,000(=¥10,000×5年)を現金で支払った。
借方科目金額貸方科目金額
保険料50,000現金50,000

決算整理仕訳

例題4
決算(×2年3月31日)にあたり、この保険料について繰延処理を行う。

3級で学習したように、前払いした費用のうち当期に帰属しない部分は次期以降に繰り延べなければなりません。

【前払費用・前受収益とは?】費用の前払いと収益の前受け 【前払費用・前受収益とは?】費用の前払いと収益の前受け

このうち決算日の翌日から1年を超えるものは長期前払費用として固定資産(投資その他の資産の区分)に表示します。

したがって、次期の1年分に係る金額¥10,000は「前払保険料」(流動資産)としますが、それ以降の3年分に係る金額¥30,000は長期前払保険料勘定で処理します。

借方科目金額貸方科目金額
前払保険料10,000保険料40,000
長期前払保険料30,000  
SHIBUYA
SHIBUYA

貸借対照表上、前払保険料は「前払費用」、長期前払保険料は「長期前払費用」として表示します。

MEMO

経過勘定項目のうち、このような短期と長期の区別をするのは前払費用のみです。その他の経過勘定項目(未払費用、未収収益、前受収益)についてはこのような区別は行いません。

復習問題

2級仕訳問題集part.2のQ2-19~Q2-21を解きましょう!