問題
P社はS社の発行済み株式の70%を保有し、支配している。次の資料にもとづいて、以下の各問いに答えなさい。ただし、使用する勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選ぶこと。
土地 | 固定資産売却益 | 利益剰余金当期首残高 |
非支配株主持分当期首残高 | 非支配株主持分当期変動額 | 非支配株主に帰属する当期純利益 |
【資料】
①S社は、簿価¥100,000の土地をP社に¥120,000で売却した。
②翌期に、P社はこの土地を¥150,000で外部に売却した。
【問1】①の取引にかかる連結修正仕訳を答えなさい。
【問2】②の取引にかかる連結修正仕訳を答えなさい。
解答
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
固定資産売却益 | 20,000 | 土地 | 20,000 |
非支配株主持分当期変動額 | 6,000 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 6,000 |
解説
土地の売買に係る未実現利益消去の仕訳がわからない人はコチラ↓の問題を先に解いてください。
本問はS社(子会社)がP社(親会社)へ土地を売却しているのでアップストリームとなります。したがって、非支配株主持分への影響も考慮する必要があります。
「固定資産売却益」が取り消されることによって連結グループの利益(利益剰余金)が¥20,000減少しますが、このうち30%の¥6,000は非支配株主の持分なので、「利益剰余金」の減少ではなく「非支配株主持分」の減少とすべきです。
そこで、この金額を連結グループの利益(親会社株主に帰属する当期純利益)に戻すために「非支配株主に帰属する当期純利益」を減らすとともに、「非支配株主持分(当期)」を減少させます。
次のように考えるとより早く仕訳を書くことができます。
①まず、ダウンストリームと考えて(非支配株主持分への影響は無視して)仕訳を書く。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
固定資産売却益 | 20,000 | 土地 | 20,000 |
②損益項目(収益と費用)の反対側に、非支配株主持分割合を掛けて「非支配株主に帰属する当期純利益」を記入する。
③「非支配株主に帰属する当期純利益」の相手科目として「非支配株主持分当期変動額」を記入する。
解答
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利益剰余金当期首残高 | 20,000 | 土地 | 20,000 |
非支配株主持分当期首残高 | 6,000 | 利益剰余金当期首残高 | 6,000 |
土地 | 20,000 | 固定資産売却益 | 20,000 |
非支配株主に帰属する当期純利益 | 6,000 | 非支配株主持分当期変動額 | 6,000 |
【別解】「土地」を相殺して、次のようにまとめても構いません。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利益剰余金当期首残高 | 20,000 | 固定資産売却益 | 20,000 |
非支配株主持分当期首残高 | 6,000 | 利益剰余金当期首残高 | 6,000 |
非支配株主に帰属する当期純利益 | 6,000 | 非支配株主持分当期変動額 | 6,000 |
解説
解答の仕訳は次の2つの仕訳からなります。
1.開始仕訳
連結修正仕訳は連結精算表上で行われるため帳簿に反映されません。そこで前期の連結修正仕訳を再度行います。ただし、開始仕訳では損益項目を「利益剰余金当期首残高」、「○○当期変動額」を「○○当期首残高」とします。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利益剰余金当期首残高 (固定資産売却益) | 20,000 | 土地 | 20,000 |
非支配株主持分当期首残高 (非支配株主持分当期変動額) | 6,000 | 利益剰余金当期首残高 (非支配株主に帰属する当期純利益) | 6,000 |
2.外部への売却に係る修正仕訳(未実現利益の実現)
外部へ土地を売却することによって前期に消去していた利益(未実現利益)が実現したので、この仕訳を取り消すために貸借逆仕訳をします。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
土地 | 20,000 | 固定資産売却益 | 20,000 |
非支配株主に帰属する当期純利益 | 6,000 | 非支配株主持分当期変動額 | 6,000 |
2つの仕訳を合算するとこのようになります。個人的にはこちらの考え方のほうが分かりやすいと思います。