予定配賦の手続(おさらい)
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製造間接費を変動費と固定費に分けたし。やっと予算の設定だね。 |
はい。ここまで少々話が長くなってしまったので、もう一度予定配賦の手続きについて、おさらいをしておきたいと思います。
- ①予算の設定・予定配賦率の算定
- 会計年度のはじめに当年度の製造間接費予算を設定します。製造間接費予算とは、製造間接費をいくらまでに抑えようという目標額のことです。そして、この予算に基づいて予定配賦率を計算します。
- ②予定配賦額の計算
- ①で計算した予定配賦率とその期間の実際操業度にもとづいて、原価計算期間の終わりに予定配賦額を計算します。
- ③実際発生額の集計
- 同じく原価計算期間の終わりに、その期間における製造間接費の実際発生額を集計します。
- ④配賦差異の把握・分析
- 原価計算期間における予定配賦額と実際発生額のズレ(配賦差異)を把握し、その原因を分析します。
- ⑤配賦差異の会計処理
- 会計年度のおわりに、その会計年度に生じた配賦差異について会計処理を行います。
【図示】

製造間接費の予算の設定方法において、日商簿記検定2級で出題される可能性があるものは公式法変動予算という方法と固定予算という方法です。
このページでは、まず公式法変動予算について見ていくことにします。
公式法変動予算とは
公式法変動予算とは、製造間接費の予算を設定するにあたって変動製造間接費の予算と固定製造間接費の予算を別々に設定する方法です。それぞれの予算の設定は次のように行われます。
- ①変動製造間接費
- 変動費は操業度に比例して増減するので、変動費については通常、「操業度1単位あたり何円」という形で設定します。この操業度1単位あたり変動費のことを変動費率といいます。
- ②固定製造間接費
- 固定費は操業度に関係なく一定額が発生するものなので、その期間における発生額総額の予算を設定します。
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文章を読んでもよくわからないので例題を使って実際に計算してみよう! |
例題
当期の製造間接費のデータは以下のとおりである。公式法変動予算によって①予定配賦率および②予定配賦額を計算しなさい。
1.当期の予算額に関する資料
変動費予算額:¥600,000
固定費予算額:¥900,000
2.操業度に関する資料
基準操業度:3,000時間
実際操業度:2,800時間
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なんか知らない言葉がいっぱい出てきました。。。 |
用語の説明
・基準操業度
基準操業度とは、ある一定期間(通常1年)の操業度の予測値です。製造間接費の予算はこの基準操業度に基づいて算定されます。
・予定配賦率
予定配賦率は操業度1単位あたりいくらの製造間接費を配賦するかということです。なお、予定配賦率は変動費率と固定費率に分けることができます。
予定配賦率 = @変動費率 + @固定費率 |
・予定配賦額
予定配賦額は予定配賦率に実際操業度を掛けて計算したものをいいます。
予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際操業度 |
公式法変動予算の計算方法
変動費予算額の設定
変動費予算額は基準操業度における変動費の予算額を表します。したがって、変動費予算額を基準操業度で割れば変動費率を計算できます。
変動費率 = 変動費予算額(¥600,000) ÷ 基準操業度(3,000時間) 変動費率 = @¥200 |

固定費予算額の設定
変動費と同じく固定費予算額を基準操業度で割って固定費率を計算します。
固定費率 = ¥900,000 ÷ 3,000時間 = @¥300 |

公式法変動予算の設定
上の2つの図(変動費予算と固定費予算)を合算したものが公式法変動予算となります。

したがって例題の答えは、次のようになります。
予定配賦率 = 変動費率(@¥200) + 固定費率(@¥300) = @¥500 |
予定配賦額 = 予定配賦率(@¥500) × 実際操業度(2,800時間) = ¥1,400,000 |
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予定配賦額を計算したから、次は実際発生額の集計と配賦差異の把握・分析だね。 |
はい。特に配賦差異の把握と分析は、実務においても試験においても非常に重要となります。次のページで詳しく見ていきましょう。
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