次回の日商簿記試験(第163回)は2023年2月26日です

支配獲得後の処理3~連結2年度目~【連結修正仕訳】

問題

P社は×1年3月31日にS社の発行済み株式の60%を¥65,000で取得し、S社を支配した。以下の資料にもとづいて、×2年度(×2年4月1日~×3年3月31日)の連結財務諸表の作成に当たって必要な連結修正仕訳を答えなさい。ただし、使用する勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選ぶこと。

諸資産諸負債S社株式
のれん資本金当期首残高資本剰余金当期首残高
利益剰余金当期首残高剰余金の配当非支配株主持分当期首残高
非支配株主持分当期変動額受取配当金のれん償却
非支配株主に帰属する当期純利益

【資料】

1.支配獲得日(×1年3月31日)におけるS社の純資産は、資本金が¥60,000、資本剰余金が¥15,000、利益剰余金が¥25,000であった。

2.×1年度(×1年4月1日~×2年3月31日)のS社の貸借対照表

3.のれんの償却は、発生年度の翌年から10年間で均等償却を行っている。

4.×1年度におけるS社の当期純利益は¥10,000であり、×1年度にS社は¥3,000の利益剰余金の配当を行っている。

5.×2年度におけるS社の当期純利益は¥15,000であり、×2年度にS社は¥5,000の利益剰余金の配当を行っている。




解答

※順番は関係ありません。

開始仕訳

借方科目金額貸方科目金額
資本金当期首残高60,000S社株式65,000
資本剰余金当期首残高15,000非支配株主持分当期首残高42,800
利益剰余金当期首残高28,300
のれん4,500

のれんの償却

借方科目金額貸方科目金額
のれん償却500のれん500

のれん¥5,000÷10年=¥500

子会社の当期純利益の振替

借方科目金額貸方科目金額
非支配株主に帰属する当期純利益6,000非支配株主持分当期変動額6,000

S社の当期純利益¥15,000×非支配株主持分割合40%=¥6,000

子会社の配当金の修正

借方科目金額貸方科目金額
受取配当金3,000剰余金の配当5,000
非支配株主持分当期変動額2,000

受取配当金:S社の配当額¥5,000×親会社持分割合(60%)=¥3,000

非支配株主持分当期変動額:S社の配当額¥5,000×非支配株主持分割合(40%)=¥2,000

解説

開始仕訳の作り方

×2年度の開始仕訳は前期末(×1年度末)に行った4つの連結修正仕訳をすべて合算したものとなります。そこで、まず前期に行った資本連結「四天王」の仕訳を考えます。仕訳の意味が分からない人は↓の問題を先に解いてください。

考え方のコツ

順番に説明していきますが、ざっくり言うと損益項目が「利益剰余金当期首残高」に、純資産の項目が「○○当期首残高」に変わるだけです。

投資と資本の相殺消去(開始仕訳)

借方科目金額貸方科目金額
資本金当期首残高60,000S社株式65,000
資本剰余金当期首残高15,000非支配株主持分当期首残高40,000
利益剰余金当期首残高25,000
のれん5,000

のれん:S社株式¥65,000ー支配獲得日の子会社の純資産(¥60,000+¥15,000+¥25,000)×親会社持分割合(60%)=¥5,000

非支配株主持分当期首残高:支配獲得日の子会社の純資産(¥60,000+¥15,000+¥25,000)×非支配株主持分割合(40%)=¥4,000

のれんの償却

借方科目金額貸方科目金額
利益剰余金当期首残高
のれん償却
500のれん500

のれん¥5,000÷10年=¥500

MEMO

前期の費用(「のれん償却」)は前期の利益剰余金の減少となるので、当期の開始仕訳ではこれを「利益剰余金当期首残高」(のマイナス)とします。

※当然のことですが「利益剰余金の前期末残高」は「利益剰余金の当期首残高」となります。

子会社の当期純利益の振替

借方科目金額貸方科目金額
利益剰余金当期首残高
非支配株主に帰属する当期純利益
4,000非支配株主持分当期首残高
非支配株主持分当期変動額
4,000

前期(×1年度)のS社の当期純利益¥10,000×非支配株主持分割合40%=¥4,000

MEMO

「非支配株主に帰属する当期純利益」は連結上の利益にならない(利益剰余金の増加にならない)ので、開始仕訳ではこれを「利益剰余金当期首残高」(のマイナス)とします。

また、貸方の「非支配株主持分当期変動額」は前期の非支配株主持分の増加額を表すので、開始仕訳ではこれを「非支配株主持分当期首残高」(のプラス)とします。

子会社の配当金の修正

2つに分解して考えていきます。

①親会社に対する配当

借方科目金額貸方科目金額
利益剰余金当期首残高
受取配当金
1,800利益剰余金当期首残高
剰余金の配当
1,800

受取配当金:前期(×1年度)のS社の配当額¥3,000×親会社持分割合(60%)=¥1,800

MEMO

借方は収益(「受取配当金」)の減少なので前期の利益剰余金の減少となります。そこで、当期の開始仕訳ではこれを「利益剰余金当期首残高」(のマイナス)とします。

また、貸方の「剰余金の配当」は前期の利益剰余金の増加となるので、当期の開始仕訳ではこれを「利益剰余金当期首残高」(のプラス)とします。

すなわち、同額の「利益剰余金当期首残高」が増減するので利益剰余金には影響を与えないということになります。

②非支配株主に対する配当

借方科目金額貸方科目金額
非支配株主持分当期首残高
非支配株主持分当期変動額
1,200利益剰余金当期首残高
剰余金の配当
1,200

非支配株主持分当期変動額:前期(×1年度)のS社の配当額¥3,000×非支配株主持分割合(40%)=¥1,200

MEMO

借方の「非支配株主持分当期変動額」は前期の非支配株主持分の減少額を表すので、当期の開始仕訳ではこれを「非支配株主持分当期首残高」(のマイナス)とします。

また、貸方の「剰余金の配当」は前期の利益剰余金の増加を表すので、当期の開始仕訳ではこれを「利益剰余金当期首残高」(のプラス)とします。

タイムテーブルの書き方

開始仕訳を作るときに上のような仕訳をすべて書いていると非常に時間がかかってしまいます。

タイムテーブルから開始仕訳を導けるようにしておくと解答時間を短縮でき効率よく問題を解くことができるので、ぜひ書き方をマスターしましょう。

1.必要な情報を記入していく

タイムテーブルには以下の時点における子会社の純資産およびのれんの情報を描いていきます。

・支配獲得時←のれんを計算するために必要

・前期末←開始仕訳を作るために必要

・当期末←連結BSを作るときなどにあると便利(本問は仕訳のみを問われているのであえて書く必要なし)

2.開始仕訳を作る

利益剰余金当期首残高の金額は次の合計額で計算します。

①支配獲得時の利益剰余金

支配獲得時の利益剰余金(¥25,000)は投資と資本の相殺消去によって全額を消去するため、開始仕訳においてこれをマイナスします。

②のれん償却

「のれん償却」は連結のみの費用(個別上は表れない費用)なので、開始仕訳においてこれを利益剰余金からマイナスします。

③支配獲得後に増加した利益剰余金のうち、非支配株主に帰属する部分

・利益剰余金の増加原因(当期純利益)→子会社の当期純利益のうち、非支配株主に帰属する部分は連結上の利益にはならない(利益剰余金の増加にならない)ため、これをマイナスします

・利益剰余金の減少原因(剰余金の配当)→非支配株主に対する配当は、連結上は剰余金の配当とはならないため、これをプラスします(減少の取消)。

・したがって、利益剰余金の純増加額¥7,000(当期純利益¥10,000ー剰余金の配当¥3,000)に非支配株主持分割合40%を掛けたもの(¥2,800)が利益剰余金のマイナスとなります。

これらに関する仕訳(「子会社の当期純利益の振替」と「子会社の配当金の修正」)を次のようにまとめて考えても構いません。

借方科目金額貸方科目金額
利益剰余金当期首残高2,800非支配株主持分当期首残高2,800