問題
P社は×1年度の期首にS社の発行済み株式の80%を取得し、支配を獲得した。次の資料にもとづいて、以下の各問いに答えなさい。ただし、使用する勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選ぶこと。
売掛金 | 買掛金 | 貸倒引当金 |
貸倒引当金繰入 | 利益剰余金当期首残高 | 非支配株主持分当期首残高 |
非支配株主持分変動額 | 非支配株主に帰属する当期純利益 |
【資料】
①×1年度末にP社が有していた売掛金のうち¥100,000はS社に対するものである。
②×2年度末にP社が有している売掛金のうち¥120,000はS社に対するものである。
なお、P社は売掛金の期末残高に対して2%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。
【問1】上記①の取引にかかる連結修正仕訳(債権債務の相殺消去、期末貸倒引当金の修正)を答えなさい。
【問2】上記②の取引にかかる連結修正仕訳(債権債務の相殺消去、開始仕訳、期末貸倒引当金の修正)を答えなさい。
【問3】仮に上記の【資料】においてP社とS社を入れ替えた場合、②の取引にかかる連結修正仕訳(債権債務の相殺消去、開始仕訳、期末貸倒引当金の修正)はどうなるか答えなさい。
解答
債権債務の相殺消去
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 100,000 | 売掛金 | 100,000 |
期末貸倒引当金の修正
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 2,000 | 貸倒引当金繰入 | 2,000 |
解説
債権債務の相殺消去
連結会社相互間の取引によって生じた債権債務の残高は相殺消去します。
また、債権債務の相殺消去で売掛金が減少することによって、これに設定されている貸倒引当金の金額も減額修正する必要があります。
期末貸倒引当金の修正
期末においては、S社に対する売掛金の期末残高¥100,000×2%=¥2,000の貸倒引当金(および貸倒引当金繰入)を減額修正します。
解答
債権債務の相殺消去
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 120,000 | 売掛金 | 120,000 |
開始仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 2,000 | 利益剰余金当期首残高 | 2,000 |
期末貸倒引当金の修正
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 400 | 貸倒引当金繰入 | 400 |
解説
開始仕訳
連結修正仕訳は連結精算表上で行う(帳簿に反映されない)ので、前期末に行った修正仕訳を再び行います。ただし「貸倒引当金繰入」は前期の費用の減少、つまり前期の利益の増加(利益剰余金の増加)なので、これを「利益剰余金当期首残高」とします。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 2,000 | 利益剰余金当期首残高 (貸倒引当金繰入) | 2,000 |
期末貸倒引当金の修正
S社に対する売掛金の期末残高¥120,000×2%=¥2,400の貸倒引当金を減額修正する必要があります。しかし、開始仕訳においてすでに¥2,000が減額されているため、修正額は差額の¥400となります。
解答
債権債務の相殺消去
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 120,000 | 売掛金 | 120,000 |
開始仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 2,000 | 利益剰余金当期首残高 | 2,000 |
利益剰余金当期首残高 | 400 | 非支配株主持分当期首残高 | 400 |
期末貸倒引当金の修正
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 400 | 貸倒引当金繰入 | 400 |
非支配株主に帰属する当期純利益 | 80 | 非支配株主持分当期変動額 | 80 |
解説
【問3】はS社がP社に対する売掛金を有している、つまりS社がP社へ商品を販売しているのでアップストリームとなります。
開始仕訳
まず、【問2】と同じようにダウンストリームと考えて(非支配株主持分への影響は無視して)開始仕訳を書きます。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 2,000 | 利益剰余金当期首残高 | 2,000 |
次に、非支配株主持分への影響を考えます。上の仕訳では利益剰余金(期首)を¥2,000増やしていますが、このうち20%の¥400は非支配株主に帰属する部分なので、連結グループの利益剰余金とはなりません。
そこで、この金額を「利益剰余金(期首)」から「非支配株主持分(期首)」へ振り替えます。
期末貸倒引当金の修正
まず、【問2】と同じようにダウンストリームと考えて(非支配株主持分への影響は無視して)開始仕訳を書きます。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 400 | 貸倒引当金繰入 | 400 |
子会社の「貸倒引当金繰入」が減少することによって、子会社の当期の利益(利益剰余金)が¥400増加します。しかし、このうち20%の¥80は非支配株主に帰属する部分なので、連結グループの当期の利益(利益剰余金)とはなりません。
そこで、この金額を連結グループの利益(親会社株主に帰属する当期純利益)から除外するために、「非支配株主に帰属する当期純利益」とします。また、この金額は連結グループの利益剰余金ではないので「非支配株主持分(当期)」(の増加)とします。
以上の理屈を理解したうえで、次のように考えるとより早く仕訳を書くことができます。
①まず、ダウンストリームと考えて(非支配株主持分への影響は無視して)仕訳を書く。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 400 | 貸倒引当金繰入 | 400 |
②損益項目(収益と費用)の反対側に、非支配株主持分割合を掛けて「非支配株主に帰属する当期純利益」を記入する。
③「非支配株主に帰属する当期純利益」の相手科目として「非支配株主持分当期変動額」を記入する。