工事収益の計上②~見積もりの変更等があった場合~

請負金額・見積工事原価の変更があった場合

工事の期間は長期にわたる場合があるので、工事期間中に資材の高騰などによって工事収益総額(請負金額)や見積工事原価を変更する場合があります。

例題1

次の【資料】にもとづいて、各期(第1期~第3期)の完成工事高、完成工事原価、工事利益を求めなさい。なお、成果の確実性が認められるため、工事進行基準(原価比例法)を適用している。また、工事の完成・引き渡しは第3期末に行われた。

【資料】

・請負金額:¥20,000

・請負時の見積総工事原価:¥15,000

・実際発生原価:(第1期)¥3,000、(第2期)¥8,200、(第3期)¥4,800

・第2期末に請負金額を¥22,000に、見積総工事原価を¥16,000に変更した。

【解答】

第1期第2期第3期
完成工事高4,00011,4006,600
完成工事原価3,0008,2004,800
工事利益1,0003,2001,800

第1期

工事の進捗度=当期までに発生した実際工事原価¥3,000÷見積総工事原価¥15,000=0.2

完成工事高=請負金額¥20,000×工事の進捗度0.2=¥4,000

第2期

請負金額や見積工事原価に変更があった場合は、変更後の金額をもって工事収益を計算します。

MEMO

過去の金額を修正するのではなく、将来の期間にわたって金額の修正を行います。

当期までの進捗度=当期までに発生した実際工事原価(第1期¥3,000+第2期¥8,200)÷変更後の見積総工事原価¥16,000=0.7

当期までの工事収益=変更後の請負金額¥22,000×当期までの進捗度0.7=¥15,400(第1期+第2期)

上記の工事収益¥15,400は第1期と第2期の合計額です。したがって第2期の完成工事高を計算する場合は、ここから第1期の工事収益¥4,000をマイナスします

第2期の完成工事高=当期までの工事収益¥15,400(第1期+第2期)ー第1期の工事収益¥4,000=¥11,400

第3期

第3期は、請負金額から第1期と第2期の工事収益を差し引いて差額で求めます

第3期の完成工事高=変更後の請負金額¥22,000ー工事収益(第1期¥4,000+第2期¥11,400)=¥6,600

途中で進行基準を適用した場合

請負時には成果の確実性が認められなかったために工事完成基準を適用していた場合でも、工事の途中で成果の確実性が認められるようになった場合には工事進行基準に変更することもあります。

例題2

次の【資料】にもとづいて、各期(第1期~第3期)の完成工事高、完成工事原価、工事利益を求めなさい。なお、成果の確実性があると認められないため、工事完成基準を適用している。また、工事の完成・引き渡しは第3期末に行われた。

【資料】

・請負金額:¥20,000

・請負時の見積総工事原価:¥14,000

・実際発生原価:(第1期)¥2,800、(第2期)¥7,000、(第3期)¥4,200

・第2期末において成果の確実性が認められるようになったため、工事進行基準(原価比例法)を適用することになった。

【解答】

第1期第2期第3期
完成工事高014,0006,000
完成工事原価09,8004,200
工事利益04,2001,800

第1期

第1期は工事完成基準によって工事収益を計上している(完成・引き渡しが完了したときに収益を計上する)ため、完成工事高および完成工事原価はゼロとなります。

第2期

第2期において工事進行基準を適用した場合は、第1期と第2期を合わせた進捗度に応じて工事収益を計上します。

当期までの進捗度=当期までに発生した実際工事原価(第1期¥2,800+第2期¥7,000)÷見積総工事原価¥14,000=0.7

当期の工事収益=請負金額¥20,000×当期までの進捗度0.7=¥14,000

第3期

第3期の工事収益は、請負金額と第2期の工事収益との差額で求めます

当期の工事収益=請負金額¥20,000ー第2期の工事収益¥14,000=¥6,000

工事代金の前受け

工事期間は長期に及ぶ場合もあるため、建設業では工事代金の一部を工事請負時(もしくは一定期間ごと)に前受けするのが一般的です。

SHIBUYA
SHIBUYA

工事が完成するまでの間、何か月もお金が入ってこないとなると支払いができなくなってしまいますよね。

例題3-1

発注先の○×株式会社と工事契約を締結した。この工事の請負金額は¥100,000であり、工事契約と同時に工事代金の一部¥20,000を小切手で受け取った。

工事代金を前受けしたときは「未成工事受入金」勘定(前受金に相当するもの)で処理します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 20,000 未成工事受入金 20,000
例題3-2

工事受注後、最初の決算を迎えた。当社では工事進行基準を適用しており、当期における工事収益は¥30,000である。

工事収益を計上したときに「未成工事受入金」と相殺します。また、残額は後日受け取るので「完成工事未収入金」とします。

借方科目 金額 貸方科目 金額
未成工事受入金 20,000 完成工事高 30,000
完成工事未収入金 10,000