税効果会計に関する問題1(仕訳問題)

問題

以下の各問いに答えなさい。ただし、使用する勘定科目は以下の中から最も適切なものを選ぶこと。なお、法人税等の実効税率は30%とすること。

繰延税金資産その他有価証券繰延税金負債貸倒引当金
備品減価償却累計額その他有価証券評価差額金貸倒引当金繰入減価償却費
法人税等調整額

【問1】次の×1年度における決算整理仕訳を答えなさい。

①売掛金に対して貸倒引当金を¥10,000計上する。このうち¥4,000は税法上損金に算入することが認められなかった。

②当期首に取得した備品(取得原価¥120,000、残存価額ゼロ、耐用年数3年、記帳方法は間接法)について、定額法により減価償却を行う。なお、税法で認められている耐用年数は5年であり、税法で認められる償却額を超過した部分については損金に算入することが認められない。

③その他有価証券(取得原価¥150,000)を時価¥160,000に評価替えする。

【問2】次の×2年度における各取引の仕訳を答えなさい。

①その他有価証券(取得原価¥150,000、前期末時価¥160,000)について、期首に振り戻しの仕訳を行う。

②売掛金¥10,000が貸し倒れたため、前期に損金に算入することが認められなかった貸倒引当金繰入¥4,000について、当期に損金に算入することが認められた。




解答

借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入10,000貸倒引当金10,000
繰延税金資産1,200法人税等調整額1,200
減価償却費40,000備品減価償却累計額40,000
繰延税金資産4,800法人税等調整額4,800
その他有価証券10,000その他有価証券評価差額金7,000
繰延税金負債3,000

解説

貸倒引当金の繰入限度超過額

貸倒引当金繰入の一部が損金に算入することが認められない場合、課税所得(税金)が大きくなります(損金不算入)。その分、当期に税金を前払いしたと考え、これを繰延税金資産として処理します。

繰延税金資産:¥4,000×30%=¥1,200

仕訳のテクニック

会計上の仕訳を書く

まずはじめに、普通に会計上の仕訳を書きます。

繰延税金資産(負債)を書く

貸借対照表の科目の反対側に「繰延税金資産」を書きます。貸方に来れば「繰延税金負債」と書きます。

法人税等調整額を書く

損益計算書の科目の反対側に「法人税等調整額」を書きます。

減価償却費の償却限度超過額

減価償却費の一部が損金に算入することが認められない場合、課税所得(税金)が大きくなります(損金不算入)。その分、当期に税金を前払いしたと考え、これを繰延税金資産として処理します。

会計上の減価償却費:¥120,000÷3年=¥40,000

税法上の減価償却費:¥120,000÷5年=¥24,000

繰延税金資産:(¥40,000ー¥24,000)×30%=¥4,800

その他有価証券の評価差額

税法では、その他有価証券の評価差額の計上は認められていないため、本問のように評価益が生じる場合は、その金額に係る税金の未払いが生じていると考え、これを繰延税金負債として計上します。

注意!

その他有価証券評価差額金は損益計算書を通さないので法人税等調整額は計上しません

解答

借方科目金額貸方科目金額
その他有価証券評価差額金7,000その他有価証券10,000
繰延税金負債3,000
貸倒引当金10,000売掛金10,000
法人税等調整額1,200繰延税金資産1,200

解説

①の取引

前期末の評価替えの貸借逆仕訳をして、取得原価に振り戻します。

②の取引

前期に損金として認められなかった貸倒引当金繰入は税法上、実際に貸し倒れが発生したときに損金として認められます。

このときに税法と会計の一時差異が解消したことになるため、繰延税金資産を減少させます。